久保田工房のクラヴィシンバルム

久保田工房は2010年頃から中世楽器再現に取り組んで来ましたが、まだ中世アンサンブルの活動はそれほど多くなく、試作品数台を貸し出して、現場の意見を聞きながら改良を繰り返し、、を続けて来ました。

特に図面上のアイディアを実楽器に反映させるのに最も苦慮するのは、この時代には未だジャックが発明されていなかったという事実を、現代の奏楽環境にどのような形に落とし込むか?という事に尽きます。

現物の残っていない楽器の再現には、当然想像に頼る部分が多くを占める訳ですが、アクションの構造については、当時とは大きく異なる現代の奏楽環境への配慮が必要と考えます。

今回採用したアクションは、ダンパー( 止音装置) の無い、最初期のジャック形状を鍵盤後部に特殊な方法で接続する、と云う方法を考案しました。アルノーのアイディアでもなく、16世紀以降のチェンバロのアクションでもない、その進化過程の途中という設定の、ある種の捏造アクションです。

さまざまな試行錯誤の末に生まれた、架空の構造ですが、このアクションによってシンバルムが現代の楽器として新たな使命を与えられ、特に中世音楽の再現に限定される事無く、さまざまな音楽シーンに活躍してくれることを願っております。

トイピアノのようなカワユイ小型チェンバロの一つとして愛用してくれたら嬉しいです。

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