東京の古楽器系公演のメッカ、新宿区初台オペラシティ3F「近江楽堂」は、心地よい響きの100席ほどの小ホール。
戦後日本を代表する彫刻家、舟越保武の静謐な彫刻作品が配置された、ステージのない礼拝堂風ギャラリーは年間300公演を誇る、日本で最も稼働率の高いホールのひとつ。楽堂の依頼によって、2005年に久保田工房のチェンバロが常備され、多くの公演を支えている。
「初期(17世紀)フレンチ・スタイル」という、聞き慣れないモデルを選んだ理由は、専用楽器庫が無く省スペースという実務上の制約もあったが、利用者に通常経験出来ない、標準規格から外れたチェンバロの多様性を知っていただきたいという、啓蒙的な理由もあることをお伝えしておきたい。
幸いにも、この楽器の音響特性は聖堂風のホール残響によくマッチして、古楽器の表現理念である、会場と演奏者と聴衆の緊密な一体感を、非常に高いレヴェルで実現していると高く評価されている。