簡単な概説
チェンバロとは、ピアノが発明、普及する以前にヨーロッパ全域で広く愛好された鍵盤楽器のひとつ。弦をはじいて発音する構造を持つ。楽器分類上は撥弦(はつげん)楽器でギターやハープなどと同類とされる。
16世紀イタリアで様式的な完成をみて、各地方で大量の「イタリアン・スタイル」のチェンバロが製造された。
その後17世紀にフランドル地方(現ベルギー、オランダ地域)がチェンバロ製造の一翼を担い、「フレミッシュ・スタイル(フランドル様式)」が確立されて、チェンバロ黄金時代が準備された。
イタリアンとフレミッシュの二つのチェンバロ製造工法の様式は、その後の各国の様式に影響を与え、フランス(クラヴサン)、イギリス(ハープシコード)、ドイツ(フリューゲル)など、呼び名も製造工法も各国独自の様式感が確立された。
18世紀はフランスの宮廷文化が大輪の花を咲かせ、クラヴサンは宮廷音楽の主役の座を担うことになる。フランス様式のチェンバロは、二段鍵盤と5オクターヴの音域を備える、この楽器の最終的な完成形として、現在も標準的なチェンバロの地位を得ている。
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